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兩處情牽夜夜心

と思われると

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と思われると


 どうしてこう、わかりきったことばかり聞くのだろうかと、信一はうんざりした。
「まあ」
「そう。あそこのコンビニ、何てったっけな?」
「……ライトハウス」
「そう。そうだった。そうだった。そういう名前だった。ライトハウス。大手だ。たしか、上から何番目かだな。しかし、最近は本当に便利んなったなあ。一日二十四時間開いてるんだから。ええ? 夜中でも、いつ行っても、何でも買える。だけんどまあ、その分、働いてる方はたいへんだわな」
 やめてくれ、と思う。助けてくれ。どうし韓國 午餐肉てそんなにいつも、無意味なことばかり言うのか。朝っぱらから、そんなわかりきったことをしゃべって、いったい何が面白いというのだ。だが、もちろん、面と向かってそう言うわけにはいかない。信一は、引き攣《つ》った笑顔を浮かべて、ひたすら老人が彼を解放してくれるのを待った。
「そうかあ。それで、今日はもう、仕事ないの?」
 よけいなお世話だと思ったが、へたに暇だまた誘われる可能性がある。
 老人も、信一と同様一人暮らしであり、しかもたちが悪いことに、食事は大勢で食べた方がうまいという強固な信念の持ち主だった。
 以前に水炊きに誘われた時は、断りきれずに老人の部屋に上がったが、延々二時間以上も、拷問に耐えなければならなかった。老人は絶えず話しかけてくるのだが、もともと共通の話題などあるはずもないので、すぐに気まずい沈黙雋景 課程が訪れる。手持ち無沙汰《ぶさた》をごまかすには、せめて、せっせと食べるしかなかったが、信一は、その時、老人と同じ鍋《なべ》をつつくことが予想以上に生理的な嫌悪感をもたらすことに気がついた。老人はねぶり箸《はし》が癖らしく、さんざん舐《な》め回した箸で無神経に鍋の中を掻《か》き回す。熱湯で消毒しているから平気だというのが、この世代の考え方なのだろう。
 信一は、怖気《おぞけ》をふるいながらも、死ぬような思いで白菜の切れ端を嚥下《えんか》したのだが、老人は、善意のかたまりのような笑みで、もっと肉を食え、遠慮するなと彼に迫るのだった。
 鍋の中で煮えている青菜よりしおたれた信一の反応を見れば、二度と誘ってはこないだろうと思うのが常識的な考え方だろうが、あいにく松崎老人には通用しなかったようだ。信一が愕然《がくぜん》としたことには、数日後、老人はその時のことを、『楽しかった晩』として言及したのである。信一の沈黙も一方的に善意に解釈され、誘われたこと自体が苦痛だったとは夢にも思っていないらしかった。
「ちょっと帰っただけで、またすぐ仕事、行きますから」
 信一は嘘《うそ》をついた。だが、それで解放してもらえると思ったのは甘かった。老人は、相変わらず無意味なことをしゃべり続け、いつのまにか、懐旧談を始めそうになっていた。
「あの、じゃあ、ちょっと、用ありますから……」
 信一は、一瞬の隙《すき》をとらえてそう言った。
「え?」
 老人は、ぽかんとした顔で信一を見た。無遠慮に彼の目を凝視する。ピンクのサングラスの奥で、信一は目を瞬いた。
「ちょっと、上で……。その」
 信一が言葉に詰まっていると、老人はうなずいた。
「ああ、そう。はいはい。行ってらっしゃい」
 ほっとしてきびすを返しかけ願景村た信一に、老人は後ろから言葉を投げつけた。
「荻野君さあ、もうちっと、はきはきした方がいいなあ。今時の若い人は、みんな、はっきりもの言うんだろ? それに、朝から暗い顔ばっかりしてっと、福が逃げてって、鬼を呼び寄せちまうよ」
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